月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

オブモンの日々

画像相変わらず、日々Of Montrealしか聴いてません…。朝も昼も夜も、起きている時間は耳元にKevinくんの声。ほんとハマると極端だな私…。他のアルバムも何枚か買い集めたのだけど、じつはここのところ聴いてるのは1月に出たアルバム『Hissing Fauna, Are You The Destroyer?』ばっかり。もうなんだか私の中のどこか深い場所にこのアルバムが致命的に刺さってしまったみたいで、逃れたくても逃れられない。でも新譜にリアルタイムでハマれるって、求めたからといって出合えるわけじゃない貴重な体験だから、今はただ、この果実のとうとい甘さに身をまかせるだけ。

 

このアルバム(今のところ日本盤は出ていないみたい)には歌詞カードが付いていないのだけど、Polyvinylのサイトから歌詞がダウンロードできるので、PDFファイルをプリントアウトして、文字とKevinくんの声を重ね合わせながら、音の渦に包まれてます。Kevinくんの詞は難解で(私の英語力のなさのせいもあるけど…)、辞書引いても載ってない単語もいっぱい。でも、学術用語や神話の人物名が行き交うその難解な文字列を眺めてるだけでも、彼の世界を、ほんの少しだけど感じられるような気がして。たぶん、ものすごく自分の内に向かってる詞。顕微鏡で自分の細胞を覗き込んで、その中に取り込まれて出られなくなってしまうような、倒錯した感じを受ける。仮想世界の重みが加速して、現実を追い越してしまってるような。かなり、病的。

 

ああ、そしてこの音。本当にすばらしい。醜悪さを含んだ、最高のうつくしさ。こんな音に、人が至れるってことに驚く。うつくしくて同時に醜くて、滑稽で同時に崇高で。これがKevin Barnesっていうひとりの人間の中から生まれていることに、ただ驚愕するしかない…。51分半の音の連続の中で(実際このアルバム、ほとんど曲間がないのだけど)、そのアイデアに驚かない場所が一瞬たりともないんだよね。毎秒、毎瞬間、どこから生まれているんだろう?という音に満ちている。こういう感覚を恍惚、と呼ぶんだろうな…。

 

そしてやっぱりKevinくんの声。ホントに、聴いてるだけで泣きそうになっちゃう、特にこのアルバムの彼のボーカルは。「The Past Is A Grotesque Animal」なんて、もう、さ…。Of Montrealって、もう10年やっているバンド(というかKevinくんユニット、なのかな)のはずだけど、その10年選手が、この痛々しいほどの切迫感を持ててる、ってとこが凄いなって思う。アーティストを危険なぐらい摩耗させるはず、これだけの切迫感に目をそむけないでいるって。それをこんな作品に昇華してしまうおそろしさ。

 

あーほんとに困った…。凄い、凄いアルバム。洋楽のこと(特に今の)をなんにも知らない私が、なんでこんなに惹かれて、なんでこんなに語ってんだろう、と思うぐらい。こうして聴いてても、その瞬間瞬間に胸元にナイフ突きつけられてるようで。

 

「Cato As A Pun」の音の悲愴さ、「Gronlandic Edit」の滑稽さとエロスの同居、「A Sentence Of Sorts In Kongsvinger」の目も眩むほどのポップさ、「Bunny Ain't No Kind Of Rider」の静かな呼びかけのせつなさ、「Faberge Falls For Shuggie」のリフレインするフレーズの恍惚、「Labyrinthian Pomp」の音のまどろみ、「She's A Rejecter」の叫びの痛々しさ…、1曲だけでも奇跡的な音のマジックが、12曲。どれも好き。すべて好き。深く深く、好き。

 

えーん。Kevinくん、すてきすぎて困る。どうすればいいでしょう。

 

*『Hissing Fauna, Are You The Destroyer?』of Montreal