月夜のドライブ

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ムーンライダーズ『MOON OVER the ROSEBUD』全曲語り!

画像ふう。目が覚めていてカラダが空いているあいだは、つねに、ムーンライダーズ『MOON OVER the ROSEBUD』を。聴くたびに、いまだ鳥肌が立つ。そして、泣きそうになっちゃう。しかも、1曲1曲で。アルバム一枚聴くだけでとんでもなく感情が撹拌されて疲労する。深く激しい快楽。つくづく、ムーンライダーズだ。

 

彼らに対する手持ちの言葉はいつでも永遠に足りないんだけど、全曲感想、書きとめておこうかな。慎重さと正確さを併せ持とうとしてたら、こんなこと一生できないもんね。ってことで個人的メモ程度にhere goes!

 

01 Cool Dynamo, Right on

息苦しさを感じるほど切迫感のある1曲めのこのイントロ、これだけでもう、名盤の予感。出だしで聞こえるドラムとギターとベースの音が、いつになく生々しく堂々としていて、このアルバム全体の「バンドサウンド」の台頭を象徴する感じ。岡田さんの王道ポップなメロディ、慶一さんのボーカル、散りばめられたキュートで謎めいたワード。「僕らには 虹が見えた/燃え尽きそうな このメロディ」、いつも逆説で時代を超えてきた彼らが、さらりと、でも自信たっぷりに“ムーンライダーズらしさ”を謳歌するオープニングチューンだと思う!

 

02 果実味を残せ!Vieilles Vignesってど~よ!

出ました、番長のお家芸!この、華麗なまでのバカバカしさと無敵の重量級サウンドの融合(笑)は、もー良明さんの独壇場だよね。そして、サビにいたる彼のメロディのポップさにも唸らされる。ど~よ!サイコー!!こんなドスのきいた音にこんな飄々とした詞を乗せて歌っちゃう自由さ、これこそロックでしょう!こんな曲をこれだけ堂々とぶちかませるバンド、ムーンライダーズをおいて他にないだろうなー。カッコよすぎ!

 

03 Rosebud Heights

もう、アルバムの解釈とかムーンライダーズって名前を離れて、普通に「名曲」。田舎町のペンションとかパチンコ屋とか漁港とかラブホテルとかのBGMでバンバン流れてほしい。いや、さすがにちょっと引っかかりありすぎていろんな作業に集中できないかもしれないけど(笑)。そこはどうしてもライダーズだ。「君は 1行目から いない」あまりにも慶一さんらしい最後のペシミスティックな呟きに倒れる。

 

04 Weatherman

「Weatherman」というタイトルは絶対博文さんだろうなと思ってたけど、岡田曲でしかもこの仕上がりは予想外!インディ・ジョーンジーな(どんな形容詞だ)イントロから、寿限無みたいなバカバカしくも妙に切迫した言葉の機銃掃射を経て、ひりつく歌がうたわれたと思ったら、サビのワンフレーズはメロディアスでウェットで。パンキッシュとロマンティックのベクトルが交錯して、聴き手の心拍数上がる。そしてなんといっても、インターバルのかしぶちさんのドラム!!カッコよすぎてマジ参る…。

 

05 琥珀色の骨

もう、ただ、ただ、うつくしい。武川さんのマンドリン、慶一さんのアコースティックギター、良明さんのエレクトリックギター、弦の重なりの向こうに描かれる、朝もやに包まれた景色。慶一さんの溜息のようなボーカルも素晴らしい。海の向こうで生まれたサイケデリック・フォークが、この国でこんなうつくしい花を咲かせるなんて、誰が思っただろう。

 

06 Dance Away

ポップでキュートでスウィートなかしぶちワールド!60年代ガールグループのヒット曲みたいでカワイイー。かしぶちさんが歌詞に投げこむカタカナ言葉は、キャンディポットの中の飴玉みたいに色とりどりで、いつもちょっぴり舶来の味がする。50代に突入したっていうのになお、こんなフレッシュなポップチューンを当たり前に繰り出せるバンド、ちょっとない。

 

07 ワンピースを、Pay Dayに

タイトルだけ聞いたときに、いちばん気になってた曲。混沌をそのまま投げ出したような世界観が、ある意味ものすごく慶一さんらしい。慶一さんの曲ってときどき、日記のようなうわごとのような言葉をそのまま並べているものがあって、彼の不穏な夢を覗き見るようでどきっとする。そして、このドラムとギターとベースはまさにアートポートだよね!カッコイイ!クレジットの最後の1行にクスッと。ちょっとした謎かけを楽しむ遊び心も大好き。

 

08 Serenade and Sarabande

ゴンドラに乗って揺られるような、異国風味あふれる1曲。どこまでも甘くどこまでもロマンティックな世界が、とてもかしぶちさんらしい。と言いながら、「Morons Land」(『Dire Morons Tribune』)を連想するような後半の壮絶な展開、これもやっぱりものすごくかしぶちさんらしいんだけど。ムーンライダーズのことを歌う、この歌詞にもいろいろ思う。詞のことはまたあとで、まとめて書こうかな。

 

09 馬の背に乗れ

爽快!痛快!激走!サーフ・ロッキン・ニューウェーヴ・スペクタクル!まあなんでもイイんだけど(笑)、「馬の背に乗れ」でこの曲とは、ほんとに予想を裏切ってくれるぜムーンライダーズ!夫と妻で下町人情ドラマ的でもあり、カエルと馬で奥の細道的でもあり(…嘘)。いやしかし、このバンドサウンドのカッコよさったら!!マジ熱出る…。50代バンドにこんなブッ飛んだ音アンプから出されたら、若者はどうすりゃいいんだろうね?まったく手つけられないおじさんたちだよ…。

 

10 11月の晴れた午後には

フォーキーでトラッドでサイケデリック。広大なヒースで風が吹き荒れているような。ユニゾンのサビがバーズみたいでちょうカッコイイ!武川さんのヴァイオリンや岡田さんのアコーディオン、それらを飾りでなく体内に血として巡らせてるライダーズって、あらためて特殊なロックバンドだと思う。そして、その特殊さを飽かずポップミュージックの普遍性につなげてきたトライアルが、こんな音楽をこの国で鳴らさせるんだと。

 

11 腐った林檎を食う水夫の歌

口笛のイントロが「Damn!MOONRIDERS」みたい!と思ったら、詞にもバンドが堂々の登場。いかにもムーンライダーズらしい(“ムーンライダーズらしさ”の解釈はまた難しいんだけど)歌詞と曲調、このバンドの魅力とポテンシャルをフルに見せるチャーミングなサウンド。「ムーンライダーズムーンライダーズであること」の高らかで誇らしい宣言のような1曲。そう、「サテンと 太鼓と果物/手放す事は無い」バンドなんだよね。そのロマンティシズムに、ずっと惚れてるのさ。

 

12 Vintage Wine Spirits, and Roses

これは…。なんど聴いても、涙。名曲揃いのこのアルバムの中でも、もしかしたらいちばん深く、刺さってしまったかもしれない。慶一さんの詞も、岡田さんのメロディも、この世のものじゃないみたいなうつくしさ。それも、太陽の下のうつくしさじゃなくて、月明かりの下の。ムーンライダーズについて何か言うとき、私はいつも「歴史なんてどうでもいい」って言い方を(彼らの「今」を愛するあまり)してしまうんだけど、この曲だけは、本当に、「30年」の闘いと自問がないと、到底届きえない世界だろうと思う。「不幸は…」以下の歌詞は、あまりにも悲しくうつくしい。

 

13 When This Grateful War is Ended

アルバムジャケットの印象にも通じる、どこかこの世の深淵を見るような曲。そして、前記事でも書いたように、私は勝手に、この曲に、ムーンライダーズの(特に慶一さんの、かな)「野に在ろうとする」覚悟を感じちゃうんだ。主人公はこのScum Partyの続く扉を後ろ手にそっと閉めて、まだ転がり続けるんだろう、と。そんなことひとつも書かれてないんだけど、ものすごく勝手に、ね。

 

14 ゆうがたフレンド(公園にて) Dub Mix

これはボーナストラック感覚、かな。糸井さんがムーンライダーズに書く歌詞は、ムーンライダーズ自身が東京っ子特有の(もしくはミュージシャン特有の)照れでつい避けてしまう部分をズバリと言い切ってしまう下世話な潔さがあって、そのことで少し、ムーンライダーズにポピュラリティをもたらす役目がいつも(「ニットキャップマン」とかも)あるのかなーと何となく思ってる。ま、どっちにしろ「少し」だけどね(笑)。個人的には、慶一さんや博文さんの、核心を避けるまわりくどさや面倒臭さがいとおしいから、糸井詞の曲は私の中ではナンバーワンにはなりづらいんだけど、でもふと気を許すと「やっぱりいいなー」って思っちゃうところが、つくづく糸井マジックかも。

 

…と、勢いにまかせて全曲語りしてみた。体力要ったなあ…。でも、これでもまだまだ言えてないんだ。慶一さんのボーカルのこと。それから、詞のこと。それはまたあらためて、書くと思う。

 

*『MOON OVER the ROSEBUD』ムーンライダーズ