月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

カーネーション『WILD FANTASY』 ~5日後のメモ~

画像カーネーション『WILD FANTASY』。発売から4日のあいだに、聴く時間を多くは取れないでいるのだけれど、触れ始めて間もないこの感じを、書きとめておくのもいいかなと思ってちょっとだけ書くね。いや、文字にできるかも自信がないほどの大きな衝撃を、すでに受け取ってしまっているのだけれど。

 

曲ごとの感想を詳細に述べられるほど聴きこんでいないので、それはまたあらためて書くとして。最初に感じた印象をひとことで言うと、カーネーション、すごいバンドになっちゃったな、ってこと。明らかに、はっきりと、間違いなく、「日本で最高のロックバンド」でしょう。それは、あいまいな比喩や賛辞ではなく、たしかな事実として。オープニングチューン「オフィーリア」の、イントロのギターの響きとドラムの音。これだけで、カーネーションが今、どんなにロックバンドとして自信に満ちあふれていて、どれほどロックの女神の幸福な息吹を一身に受けているか、ってことがわかる。もう彼らの勝負の相手は、この国境の中、この時代の中にはない気がする。ましてや、マーケティングや数字や市場分析なんて、今の彼らには(無関係とはいえないけれど)「無意味」だろう。そういう気休めアイテムが好きなヤツらは一生その中で貧しい戦いをしてりゃいい。カーネーションは、もう、そんなものとはまったく別のフェイズで、「永遠」へと繋がる価値を闘い取ろうとしてる。

 

圧倒的な音の塊。なんというか、もう、「各論」じゃないんだよね。「カーネーション」というその存在自体をまるごと世に問うぜ!というぐらいのとんでもない気迫で、アルバム一枚が統べられている。でもその圧倒的な塊が、無神経なただの「重量」じゃないところが、カーネーションの素晴らしさであり、もっといえばエンジニア・鳥羽修さんの凄さでもあると思う。ソリッドなひとかたまりの音が内に含む、ひとつひとつの楽器の音色のうつくしさや感触の複雑さ。たった3人で、こんなにゆたかな音を鳴らしていたバンド、今までにあっただろうか?

 

カーネーションの場合いつもそれが当たり前、という恐るべき事情はあるけれど、ごく普通に考えて、これほどすべての曲が粒ぞろいのアルバムは世の中でも稀な例だ。ファンはこのことにもっと驚くべき(笑)。中でも個人的にひとつあげるなら、やっぱり「PARADISE EXPRESS」にとどめを刺す。昨年のライブ盤『RUNNIN' WILD LIVE』ですでに発表はされていた曲だけど、今回のアルバムを初めてプレイヤーで回して、最後のこの曲の「Oh!Yeah」のコーラスに至った瞬間、涙が止まらなくなっちゃった。すべてをやわらかく包みこみ、すべてをやさしく許しながら、大きな「次の世界」に開かれていくこの感じ。アルバムのラストにこの曲が配されている意味。もう、交通手段なんて要らない気がしてくるんだ。「思い」さえあれば、私たちは、星座のずっと先で、貴いものと直接つながれるんだ、って!それは、ひとすじの風を追いかけ続けている「おれ」がそこにいてくれるから、信じられるファンタジーなんだ。そこで闘ってるきみに励まされて、私たちがようやく手にできる勇気なんだ。

 

直枝さんの詞がまた、今回はとんでもないことになってる。こんな場所まで来てしまった彼と、このレベルで戦える相手は、これも国内にほぼ皆無だろう。日本のロック詞、直枝政広と一色進と鈴木博文ですべてだろう、と思うぐらい。かなり乱暴だけど、半分本気。いや、やっぱり乱暴か(笑)。まいいや、そのことはまたあらためてちゃんと書こうと思うけど、とにかく、直枝さんに「Echo Park Lakeの衛星ステイション」とか歌われると、リクツ抜きに、細胞レベルでウキウキしちゃうんだ!

 

次に書くときは、もうちょっと丁寧にすくえるといいな。どこでどう、私が椅子から転げ落ち、体温が一度上がり、ため息をつき、歓声を上げ、心臓がきゅんと痛くなっちゃうかってこと。カーネーション、ほんと、ここまでとんでもないアルバムを作り上げてるとは思わなかった。「最新作が最高作」をレトリックに終わらせないバンドなんて、実際のところ、そうはいない。

 

*『WILD FANTASY』カーネーション