月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

競馬場の青空

画像恒例のちょっと遅い夏の旅行。恒例の東北方面へ。実家に帰る旅でもないので毎年東北でなければならない理由はないのだけれど、人で混むところを避け温泉を選ぶ結果、ここ何年も夏の旅行は東北、ということになっている。とりたてて名所旧跡を巡ったりもしない家族が、唯一毎年訪れていたのが山形県かみのやま競馬場だ。訪れていた、と過去形なのは、ここが全国の公営競馬場の多分にもれず、昨年11月廃止になってしまったから。今はただ他地域で開催される馬券を売るためだけに門を開けている。もう馬は走っていない競馬場に、今年も行ってみた。

 

ギャンブルに興味のない私がオットに連れられて今年でもう7度目ぐらいになる。上の娘などディズニーランドには1回しか行っていないのに、ここには生まれて以来のきっちり5回来ている計算。彼女はきっと後から親の大いなる横暴に気付くだろう。中庭が交通公園にしつらえられていて自転車で走り回れるようになっていたのだけれど、今は自転車もパンダやナスの四輪車も一箇所に固まって空を見上げている。芝生にぽつぽつと散らばっているコンクリート製のカエルやキリンやライオンやカバは、久しぶりに訪れる幼児に目をかがやかす。彼らが動ける立場だったらきっとそばへと一目散に駆け寄ってくるのだろうけれど。5歳児と3歳児はかろうじて残っているすべり台やブランコで遊ぶ。死んだ公園がいっとき甦る時間。馬券を売っていた窓口もフランクフルトソーセージを売っていた売店も青いビニールシートがかけられ人影はない。小さな周回コースで客を乗せていた二頭の馬、モモとザオーももういない。

 

オットは感慨深そうに競馬場内を見回している。彼の財布の中には、ここを訪れた7回ぶんの日付の勝ち馬投票券が、後生大事に取ってあるのだ。ギャンブラーのロマンだか哀愁だかの一部が、ここにあったらしい。私にはよくわからないけれど。青空はただ朗らかに広がっている。ギャンブラーよりも、たぶんコンクリートのカバよりも、ここで長くこうしていないといけないから、やっぱり朗らかに、ね。